weeklyアキタミチコラム

九州産直クラブのカタログ連載中の畜産・農産コラムをまとめています!

16004nezasu Vol.7 田んぼで作る牛のエサ

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「安心・安全な食」の根っこを考えるとき、一番大事なことは「食べ物が買える」ことだと思います。今の日本ではお金さえあればいつでもどんな野菜も食べ物も手に入るので、その事をうっかり忘れてしまいますが、それが「あたり前」ではないことを、食料自給率の問題を考えるたびに思い出します。

特に畜産業界は深刻で、餌の基本となる飼料の約9割が外国からの輸入に頼っています。地球規模の気候変動による不作やバイオエタノール需要、新興国の食の多様化による穀物需要、円安など、穀物の価格は高騰の一途を辿っており、肉の価格や農家の生活に大きな打撃を与えてしまう構造です。

そもそも、日本に肉食や牛乳を飲む文化がここまで広がったのは明治以降。飼育規模が大きくなるにつれ、外国からの飼料の輸入も増え、日本は世界で一番たくさんトウモロコシを輸入する国となりました。かつては、「国内で作るよりも輸入したほうが安い」という状況でしたが、近年は高コストな自給飼料に追いつく勢いで輸入飼料が値上がりしています。「耕作放棄地の解消」や「飼料の自給」を目指して飼料米の生産に補助金が出たり、食品廃棄物を使用することが推奨されたり、できる限り輸入に頼らない畜産のかたちが模索されています。

そんな中で、「昔は、田んぼで牛のエサを作るなんて、考えられなかった」と、以前取材に行った熊本あか牛の繁殖農家の方も、『すすき牧場』の薄社長も、同じことを言っていたことを思い出して、外国か国産かを考えるという議論とは別の問題として、食べ物に対する根本的な考え方が変わってしまったことを感じます。

本当は、肉として食べるためだけに育てるということは、すごく特別で贅沢なこと。もしかしたら、お金を出せば買うことができてしまうから、安いお肉があるから、私たちはわからなくなっているのかもしれません。輸入飼料に頼らない畜産のためには、牛たちが食べるもの・飼い方を変えると同時に、私たちの食べ方も変わらなければ。走る豚やあか牛をたくさん食べて欲しい!と思いながらも、私たちの食生活の中でお肉がもっと特別な位置になって、あたり前ではない食べ物になっていくのがいいのではないかとふと考えてしまいます。