weeklyアキタミチコラム

九州産直クラブのカタログ連載中の畜産・農産コラムをまとめています!

15048nezasu vol.5 TPPがお値打ちな牛肉と酪農に与える影響

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 かねてから「本当に国内産業への影響は大丈夫なのか」と問題視されてきたTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)。そもそも日本の国土は、海外に比べると狭いので、海外が「生産効率高い=価格が低い」のは、すごいことでもなんでもなく地域特性の問題。さらに関税が撤廃され、「外国産は高い」という価値観がなくなったとき、私たちはいかに「価格以外の価値」で判断できるのでしょうか。

先日聞いた、ちょっと不安になった話をひとつ。現在38.5%の関税がかかっており、段階的に下げられて16年目に9%にまでなる見込みの外国産牛肉と酪農に関するお話です。

もちろん、「牛肉が売れなくなる」「農家が少なくなる」ということが不安要素なのですが、実は「牛」とイメージするような「●●牛」などの「和牛」よりも「一番大きく影響を受けるだろう」と言われているのが「国産牛」などと呼ばれる少し安価な牛肉となる牛たち。乳廃牛やホルスタインの雄牛、交雑牛などと呼ばれる乳牛の子どもとして種付けされた肉用種(すすき牧場の「おこめ牛は」この生まれの牛です)で、加工食品や外食産業、普段使いとして食べてきた牛肉です。国産の安価な牛肉が、外国産にとって変わっていくほどに、国産牛の市場が価格崩壊し、育てるための採算ラインを下回ってしまうことが考えられます。

それだけでは終わりません。そもそも「国産牛」たちが安く流通する理由は、純粋に「肉にするため」に生ませて育てるわけではなく、出産しなければいけない乳牛のお腹を借りたり、出産を経験している繁殖牛や乳廃牛だったり…と、別の役割も持っている牛を肉にしているから。つまり、畜産と酪農、一見関係ない問題に感じるかもしれませんが、「国産牛肉」は、酪農家や肥育農家の収入の一部としても重要な役割があり、その崩壊は酪農家の経営にも影響を及ぼすかもしれない、という心配があるのです。

今後、補助金で生産者を保護できるのかもしれませんが、食の基盤が崩壊することで私たちは食べ物を自立して確保できなくなってしまうことが心配です。