weeklyアキタミチコラム

九州産直クラブのカタログ連載中の畜産・農産コラムをまとめています!

16007nezasu vol.8  驚きの添加物「亜硝酸ナトリウム」

 WHO(世界保健機構)の専門機関が発表した「加工肉の発ガン性」問題。「1日に50g以上摂取すると大腸がんの発症リスクが18%上昇する。」という報告がなされ、加工肉(ハムやソーセージ)を食べる危険性が喫煙と同じレベルだ、という衝撃的な見解が話題になりました。

 具体的にがん細胞を生み出す原因物質やメカニズムについては報告されていないそうですが、「ハム・ソーセージで発ガン性の危険」といえば、以前から発色剤として使用する「亜硝酸ナトリウム」が問題視されています。

 「亜硝酸ナトリウム」は、そもそも毒性が強い物質で致死量は0.18g~2.5g。毒薬としても使用される青酸カリの致死量0.15gと変わらない危険性がある上に、肉に含まれるアミンという物質に反応して「ニトロソアミン」という強い発ガン性を持つ物質に体内で変化すると言われています。一般的にも残留基準値が厳しく設定されていますが、もちろん、できれば使っていないものを食べたいものです。

 しかし、それでもこの薬剤がほとんどのハムやソーセージに使われているのには2つの目的があります。

 まず一つ目が「肉の見た目をよくする」発色剤としての役割です。挿入している写真をご覧ください。

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これは、先日出会った無添加品と一般品、両方のベーコンを作っている生産者の商品です。上が無添加、下が発色剤入りなのですが、上の方がどう見ても脂身が多く見えます。発色剤を使うと、下の写真のように脂身だと思っていた部分も肉であることがわかりますが、無添加で作るとまるで半分くらいが脂身でできているよう。脂身に見えるからと言って、この部分を落してしまうと肉の歩留まりがかなり悪くなり、より採算が合わなくなってしまうのが無添加の難しいところです。このような理由により、見栄えと歩留まりを考えて発色剤としての「亜硝酸ナトリウム」は欠かせません。

 もうひとつの目的は、その強い毒性を用いて、加工肉に発生しやすい「ボツリヌス菌」を抑えること。土の中や海や川の泥の中に住んでいるどこにでもいる菌ですが、菌の中でも最強と言われる神経毒を作り出します。真空パックの肉の中やソーセージの中で繁殖できるため、加工肉では特に怖がられており、この菌の働きを抑えるために、「亜硝酸ナトリウム」を加えていることもあります。食べる直前に100度で数分間加熱すれば死滅しますが、どちらの危険性も侮れません。

 

 絶対悪ではないけれど、でも使うことがあたり前ではないように。自分が選ぶとき、販売者として作るに携わるとき、何を大切にするのか問われているのだと思います。